悲しいことに、毎年、保健所などで殺処分される犬が後を絶ちません。
その背景には、単なる思いつきや安易な動機で犬を飼ってしまい、結果、経済面やお世話などが負担になってしまい、捨ててしまう飼い主の存在が少なからず存在します。
こうした不幸な犬を増やさない為にも、犬を飼う前にクリアしないといけない条件を今一度、真剣に検討してみましょう。
犬を飼うための経済的余裕はありますか?
毎日のご飯代以外にも、おやつやおもちゃ、ペットシーツなどの消耗品、トリミング費用、時にはペットホテルやペットシッターを利用する事もあります。
そして、病気予防の為のワクチン接種や、ノミ・ダニ・フィラリア予防薬、また、犬が病気や怪我を負った際には多額の医療費が必要です。
愛情だけでは解決できない問題もありますので、今一度、ご自身の経済力をご検討ください。
また、いざという時には少しでも負担を減らして犬の治療に備えられるペット保険の加入がお勧めです。
家族全員が犬を飼う事に賛成していますか?
ご家族の中に一人でも犬に対する嫌悪感や無関心、アレルギーなどがあると、ひとつ屋根の下で生活するのは難しくなります。特に犬アレルギーの検査は犬を飼う前にご家族全員が必ずやっておくことをお勧めします。
※犬アレルギーでも犬を飼える?
家族の一員として犬を迎えると、10年近く共に暮らすパートナーになりますので、必ずご家族全員の賛成を得た上で、犬の習性に合わせた住環境を整え、ご家族の皆さんでたくさんの愛情を注ぎ、一緒に楽しくしあわせに暮らしてください。
※犬の習性に合わせた住環境作り
犬を飼える住宅環境ですか?
賃貸の場合『ペット可』や『ペット共生賃貸住宅』などがあり、それぞれペットを飼うための契約条項が必要です。
『ペット飼育不可』の物件で、こっそり内緒で飼うとトラブルの原因になり、結果的に犬を不幸にしてしまいます。
契約でペットの飼育が禁止されていたら、いさぎよく諦めるか、それでも犬を買いたいのであればペットを飼える物件へ引っ越しをしましょう。
また、例えペット飼育可能な物件でも、極端にお部屋が狭いと犬が窮屈に感じてしまい、吠えなどの問題行動が発生し、騒音トラブルにつながる事もありますので、お部屋の大きさと飼いたい犬種の習性や体格などが飼育環境に適しているのか今一度、ご検討ください。
引っ越しは多くないですか?
犬は環境の変化にとてもデリケートです。あまりにも頻繁に引っ越しを繰り返すと、その度に犬に大きなストレスを与え体調を崩す事も多くなりますので、慣れ親しんだ場所での安定した生活環境が必要です。
ただ、お出かけが好きな犬の場合、普段から犬連れの旅行やキャンプなどで環境の変化に対応できるようにしておくと、いざという時、ペットホテルでのお預かりや体調を崩した際の入院時、災害での同行避難などでも少ないストレスで済むので安心です。
しかし、あくまでもその子の性格や犬種の習性もありますので、無理は禁物です。環境の変化に弱い犬の場合は穏やかな暮らしができる安定した場所で過ごしてあげてください。
家にいる時間は多いですか?
犬は群れの中で暮らし、愛情を必要とする動物なのでお留守番が苦手です。
長時間のお留守番で、ひとりぼっちで放っておかれると不安が増しストレスを与えます。仕事や飲み会などで帰宅が遅く、家にいる時間が少ない方は犬を飼うのを控えた方がよいでしょう。
犬の為ならプライベートを犠牲にできますか?
犬はとても愛情を必要とする動物です。毎日の食事やお散歩はもちろん、歯磨き、被毛のブラッシングやマッサージなどのスキンシップ。心身共に犬のケアに時間を割かなければなりません。
犬との時間よりも自分の趣味や遊興に対する関心が強い方は安易にペットは飼わず、ぬいぐるみで満足していただくことをお勧めします。
飼いたい犬種と自身のライフスタイルは合っていますか?
犬の犬種はとても多く、それぞれ特徴も全く違います。犬種による特徴を無視してただ思いつきや可愛いという理由だけで犬を飼ってしまうと犬の飼い主もしあわせにはなれません。
1日数時間のお散歩を必要とするボーダーコリーなどを忙しくてお散歩の時間が取れないひとり暮らしの人が飼ったら?引っ張る力の強い大型犬やグレートピレニーズなどを足腰の弱い年配の人や力の弱い女性や子供がお散歩をさせるとどうなるか?
今一度、ご自身のライフスタイルと犬種の特徴をしっかり調べてからご検討ください。
犬を散歩させる体力と時間はありますか?
どんなに小さな小型犬でも犬にとってのお散歩は子供にとっての遠足と同じでワクワクしたり、私たちがスマホで情報収集するのと同じで犬もお散歩で外の情報を知ることがストレス発散になるため、毎日欠かせない大事なことです。
いつでもどこでも好きな時に外出することができない犬にとって、飼い主がお散歩を怠ると犬はとても大きなストレスを抱え無駄吠えなどの問題行動につながります。
また、犬の筋力維持や肥満予防など健康管理のためにもお散歩は必要不可欠です。
その為、お散歩をさせる体力がない、足腰が弱くて歩けない。といった事情を抱えている人は、まずは犬のお散歩に付き合えるだけの健康体を取り戻すことを優先して頂き、犬を飼ったらご自身の健康維持と犬との絆を深めるためにも毎日のお散歩にお出かけください。
お掃除は好きですか?
毛が抜けにくい犬種もいますが、基本的に犬には抜け毛があります。抜け毛だらけでホコリも多いとノミやダニが犬に寄生してしまいます。また、まめにトイレシートの交換をしないと排出物の匂いがお部屋に充満しますので、犬や飼い主の衛生面にも影響が出ます。
ただ、私もそうでしたが、お掃除が苦手な方でも、犬の誤飲や室内での事故を防ぐためにも、犬を飼ってからの方が常に部屋が片付けられており窓の換気もまめに行い、むしろ犬を飼う前よりキレイ好きになったという人も多いです。
どうしてもお部屋のお掃除や片付けが苦手で自信のない方は、犬を飼う前に今一度ご検討ください。
犬のためにお勉強はできますか?
犬が人間社会で一緒に暮らすにはある程度のしつけは必要です。
しつけや犬の習性、お散歩マナーなどの勉強を怠ると犬も飼い主も楽しくしあわせに暮らすのが難しくなります。
子育てと同じでどんな飼い主様でも100%完璧な犬を育てるのは困難です。なのでまずは犬を迎える前に基本的なことだけでも予習しておくことで、少し余裕が持てその後の犬との暮らしがとても楽しくしあわせに過ごせます。
犬のしつけには終わりがなく、子犬時代だけではなく人と同じで犬も常に新しいことを教えてあげると時間はかかりますが覚えてくれます。我が家の虎鉄ちゃんも日々、私と一緒にお勉強してます。笑。
犬のしつけも一人で悩まず、戸惑うときはプロに助けて貰ったり、相談に乗ってもらうこともお勧めします。
老いた犬を介護する覚悟はありますか?
近年では、室内飼いをされる犬が増えたり、どうぶつ医療の発展、フードの品質改良などで昔に比べて犬の寿命がかなり長くなりました。
それでも犬の寿命は人間よりも短く、あっという間に私たちの年を越し、老境がやってきます。
犬の寿命が伸びたことで認知症にかかる犬も増え、飼い主を見分けることができなくなったり、呼びかけに反応がなくなるのはとても寂しいことです。
しかしそういった状態になっても犬に対する愛情を失わず、老犬に寄り添える強い意識と覚悟が必要です。
そして、介護は大変ですが、愛犬との貴重な時間を過ごせる大切な日々です。
こちらのサイトを参考にしながら、愛犬とのしあわせ時間を大切に、いつか虹の橋を渡るその時まで愛情深く寄り添ってあげてください。
※犬の介護と介助
もしもの時、犬の後見人はいますか?
一人暮らしで犬を飼っている場合、もしものアクシデントに見舞われ犬が部屋の中に取り残される危険があります。
例えば、外出先で地震、災害、洪水、事故などで帰宅困難になった時に犬が困らないように、財布の中に『家に犬がいます。私にもしものことがあれば下記に連絡してください」とメッセージを添え、犬の名前と性別、年齢と一緒に緊急連絡先が書かれたメモを持ち歩くようにしましょう。
また、飼い主の留守中に家が火事に見舞われることもありますので、やはり玄関先に「家の中に犬が○頭います。もしもの時は助けてください』と書かれたシールを貼っておきましょう。家の中に犬がいることを明示しておくことで防犯対策にもなります。
お家の中でも一人暮らしの方だと、脳卒中や心筋梗塞、浴室での転倒などによる事故や突然死などにより犬のお世話ができなくなると、残された犬にも命の危険が及びます。
犬の激しい鳴き声などでご近所の方が異常を発見してくれるにも数日はかかり、その間、犬は食事も水も飲めない状況が続きます。
飼い主にもしものことがあり、犬のお世話ができる人がいないと、犬は保健所や動物愛護センターなどへ連れて行かれます。
そしてすぐに新しい家族が見つからない場合は殺処分の対象となります。
大切な愛犬を不幸に合わせない為にも、定期的にひとり暮らしの飼い主の安否確認をしてくれて、もしもの時は犬を引き取って生涯大切に面倒を見てくれる人を見つけておくことがとても重要です。