健康な体づくり

目次

おうちで出来る週1度のバイタルチェック

4つのバイタルサイン(体温、呼吸速度、心拍数、血圧)を見ることで、愛犬の健康状態を知る事ができます。

常日頃から愛犬と触れ合い、正常な状態を知っておくことで体調不良や病気に気づきやすくなります。

おうちでも簡単に出来るので是非チェック方法を覚えて、週に1度のバイタルチェックを習慣にしてくださいね。

バイタルチェックをする際の注意点

  • 犬がリラックスしているときに行う
  • 犬が信頼している人が行う
  • 室温は暑すぎず寒すぎず
  • 運動後は避ける
  • 明らかな病気の時は避ける

体温のチェック方法

1歳を過ぎた成犬の平熱は37.5~39.2度です。

子犬の体温はやや低く35.6~36.1度ほどで、4週齢頃から自力で体温維持ができるようになります。

体温を知る最も簡単な方法は、抱っこをする際いつもより火照っている感じがしたら高体温、逆に温かさを感じない場合は低体温を疑います。日頃から犬と触れ合うことで体温の変化に気づきやすくなります。

正確な体温を知るにはペット用の体温計を使用します。肛門から直腸温度を測定する方法もありますが、これは嫌がる犬も多く、衛生面でも心配がありますので、直腸温を知るのは獣医さんに任せた方がよいでしょう。

おうちでは、耳で測定するペット用体温計が売られていますので、こちらを使用されるのがおすすめです。

②呼吸数のチェック方法

犬の正常な呼吸数は1分間で10~35回です。

犬が休んでいるときにお腹の上下動を見ることで簡単にわかります。15秒間の呼吸数を4倍にする方法は不正確になりやすいので、最低でも30秒間の呼吸数を2倍にカウントした方がよいでしょう。

運動直後や眠りが浅い時は呼吸がやや乱れていることがありますので、犬が穏やかに眠っているときに観察しましょう。

お腹の上下動がはっきりしない場合は、鼻先にティッシュペーパーの切れ端を垂らし、息を吐き出す度にティッシュが揺れた数をカウントすることもできます。

③心拍数のチェック方法

犬の正常な心拍数は1分間で60~140拍、15秒で15~35拍程度です。

体か小さい犬は心拍数が増加する傾向があり、小型犬で180拍、生まれたばかりの子犬では220拍になることもあります。

犬の心臓は、左前足のひじを脇腹近くにくっつけたあたりにあります。ただ犬種によっては足の長さが違うので、日頃から心臓の位置を素早く特定できるように確認しておきましょう。

指先や手のひらで犬の心拍数を感じ取ることができたらカウントします。

1分間フルでカウントするか30秒間の脈拍を2倍にしても構いません。聴診器を使用すればより正確にカウントできます。

また、大腿動脈で触診する方法もあります。犬が横になったタイミングで床に接している方の足を確保しましょう。これは心臓より低く床に対して圧迫しやすい為です。足を確保したら、人差し指と中指を揃え、股間から太ももの内側に沿って少しずつ下にずらして行きます。慣れてくると筋肉と筋肉の境目あたりにわずかな脈動を感じることができますので同じくカウントしましょう。

犬が緊張していると心拍数に誤差が生じますので、くれぐれもリラックスしているときにチェックしましょう。

※左脇と太ももの写真

④血圧のチェック方法

犬の正常な血圧は収縮期血圧で180mmHg未満、拡張期血圧で120mmHg未満の範囲です。

犬も人間と同じくカフ(腕輪)を巻き付けて測定するのが正確ですが、これは獣医さんに任せて、おうちでも簡単にチェックできる方法をご紹介します。

まず、犬の口を開き歯茎を指で押します。すると血液が押し出されて白くなりますので、白くなったらすかさず指を離し、血液が戻り歯茎が再び赤くなるまでの時間を測ります。

正常であれば2秒未満で戻りますが、2秒以上かかるようでしたら血圧の低下、脱水、ショック、低体温などが考えられますので、その場合は獣医さんに相談しましょう。

犬の顔と体をみる1日1回のヘルスチェック

①目をみる

元気な犬の目はきれいに澄んでイキイキとしています。くもっていたり目ヤニがついていないかチェックしましょう。

乾燥した空気や風が強い冬や、ほこりや花粉が多い春は涙が出やすい季節なので特に注意して観察してください。

朝起きると、たっぷり目ヤニがついていたり、絶えず涙を流している犬には『あっかんべ〜』をしてみましょう。下まぶたの内側が真っ赤になっていたら結膜炎の可能性があります。その際、眼球もよくチェックしてみましょう。傷がつくように白く濁っている時は角膜炎や角膜潰瘍を起こしていることもあります。

目の大きな犬種に多い涙目・・眼球が大きく目が飛び出しているパグやシーズー、ペキニーズ、チン、チワワなどはゴミが入りやすいので涙を流す頻度が多く、痒みで目を掻いているときに爪で角膜を傷つけることがあるので特に気をつけてください。また、マルチーズやヨークシャテリアなどのお顔まわりの毛が長く、伸びて目に入ってしまうと結膜炎を起こしやすくなります。マメに目のまりのカットを行い、獣医さんの診察を受けることをおすすめします。

黄色い目ヤニに注意・・涙は目からのゴミや細菌を流し出すことのできる最高の目薬です。白っぽい目ヤニはゴミやほこりが入っただけなので朝、起きた時やお散歩帰りには濡らしたコットンで軽く拭き取ってあげましょう。注意したいのは結膜で細菌が増殖してしまうと黄色い目ヤニが出ることがあり、症状が悪化すると治療が困難になりますので、早めに動物病院で受診してください。

目が白く濁っている・・眼球の表面の角膜が炎症を起こし、それが進行すると角膜の一部が白く濁る状態が角膜潰瘍です。角膜が傷ついた時にも起こりますので日頃の注意が十分必要になります。白内障は先天性の異常によるものと、老化や糖尿病性などいろんな原因による後天性に起こるものとがあります。初期では視力に問題はなく目薬と抗生物質の治療を行います。進行すると視力の低下とともに緑内障を併発したり、眼球に穴が開く恐れもありますので、早急に獣医さんの診察を受けましょう。

②鼻をみる

鼻は湿っていますか?鼻はひんやりと濡れている状態がベストです。ただし、寝ている時は乾いていますので鼻のチェクは犬が起きているときに観察しましょう。

いつも鼻が乾いている・・起きてからもずっと鼻がカサカサに乾いているなら、慢性的に熱がある可能性があるのですぐに体温を測ってみましょう。また、尿毒症などの慢性の病気にかかると熱がなくても鼻が乾く症状があります。

粘り気のある鼻血に注意・・犬もときには鼻血を出すことがあります。鼻は血管が多いので物や家具などに鼻をぶつけて鼻腔を傷つけたことによる出血ですとしばらくすると止まります。心配なのは何回もくしゃみをしてその時に粘り気のある血が混ざった鼻汁が出たら治療が必要です。これは異物を吸い込んでしまったか、アレルギーもしくは鼻の腫瘍に伴う出血と考えられます。特に鼻の中や上あごに腫瘍があるときは多くの場合、いつも同じ側の鼻の穴から血が出ます。このような鼻血を見つけたら早急に獣医さんの診察を受けてください。

③耳をみる

耳の中は清潔ですか?また、自宅でシャンプーをされる際は、耳の中にシャンプー液が入らないようにコットンを詰めておくといいでしょう。入浴後はティシュやタオルは繊維が硬く耳の中を傷つける恐れがあるので、コットンで軽く耳の中を拭いて乾燥させましょう。

耳をしきりに掻く、顔を振る・・犬が耳を必死に掻きむしっていたり頭を振っていると、耳ダニが寄生している可能性があります。また黒い耳アカも見られます。耳アカを白い紙の上に置き、しばらくして白い小さな生物が耳アカから出てくるのを発見したら間違いなく耳ダニが寄生しています。その際は動物病院で治療しましょう。また、ゴールデンレトリバーやビーグルのように耳が大きく垂れている犬種は、耳だれという病気にかかりやすいので注意しましょう。耳垂れとは、耳道にたまった分泌物が原因で傷口から細菌に感染して炎症を起こす病気です。これもしきりに耳を掻き、悪い耳の方に頭を傾けてブルブルと振る動作が見られます。

耳たぶが腫れる・・耳がパンパンに腫れて痛みがあるようなら耳血腫(じけつしゅ)の疑いがあります。外耳炎や耳ダニに伴う痒みから激しく首を振り、耳をどこかにぶつけてしまったために耳の皮下組織の血管が切れて出血し腫れてしまいますので獣医さんに診察してもらいましょう。

④口と歯をみる

歯や歯茎が健康でなければ食事を美味しく食べることができません。また痛みがあると食べているものをこぼしたり、食欲が低下したりしますので、こうしたサインにいち早く気づいてあげて、犬がいくつになっても食事が楽しめるよう歯磨きと定期的な歯石の除去を怠らないようにしましょう。

歯垢や歯石がある・・犬の歯は本来白色をしていますが、歯の根元に歯垢がつき、その上から歯石に覆われると茶色から黒褐色に変色して行きます。歯垢や歯石は歯磨きで予防することができますが、歯周病の原因となる歯石はわずか24時間の間に形成されてしまいますので、できれば1日1回の歯磨きが理想です。

よだれが多く口臭があり歯がグラグラする・・歯垢や歯石がたまると細菌が炎症を起こして歯肉炎になり口臭が生じます。また進行すると歯槽膿漏となり歯がグラグラになり、さらには頬の皮膚を破って穴が開き、血や膿みが外に出ることもあります。口内炎や舌潰瘍では悪臭のするよだれが目立ちます。

歯石や腫瘍は定期的に口の中をチェックしないと分かりません。そのためにも子犬の頃から口の中を触れるようにしつけましょう。またドラッグストアでも手軽に買えるおすすめの歯磨きグッズなどをYouTubeでも実践を交えてご紹介していますので、是非参考に観てくださいね。よければチャンネル登録もよろしくお願いします。

⑤皮膚

犬が体をかいてる姿を見て「かゆいのかな?」と思うだけでほうっておく飼い主さんが多くいます。

犬にもたまにかゆくなることはありますのであまり神経質になる必要はありませんが、しきりに体をかいたり、体のあちこちをガジガジと噛んでいるようであれば何かしらの病気にかかっている可能性があります。

かゆみがあったら、まず、かゆがっている毛や皮膚をよく見ましょう。その症状によって原因は違ってきますし、治療の仕方も異なります。また、犬の体質にも違ってきます。犬にアレルギーがないかどうか、他に病気をもっていないかどうか、やはり日頃のチェクが必要となります。

強いかゆみや毛が抜ける・・イヌヒゼンダニという小さなダニが、皮膚にトンネルを作って寄生すると、疥癬症(かいせんしょう)という病気になります。疥癬症にかかると、非常に強いかゆみが生じます。そのかゆみは夜も眠れないほど凄まじいものです。しきりにかくので、次第に耳の後ろやひじの毛が抜けてボロボロになるのですが、こうなってから気づくようでは、あまりにも犬がかわいそうなので、早期に動物病院で治療を受けてください。また疥癬症にかかった犬を触ると人間にも感染することもありますので、犬に触る際はくれぐれも注意し、手洗いなどをしっかりおこなってください。

背中、尻尾の付け根がかゆがる・・ノミの唾液でアレルギー症状の原因になることもあります。かゆみに加えて、特に背中から尻尾にかけての毛が抜け、象のような皮膚になります。これらの部位は犬の口や足が届きにくいので、なかなかノミが取れないのも原因です。ノミは動きが早く、成虫のノミを見つけるには、たくさん寄生していないと難しいです。しかし、毛の根元に黒いよごれのようなノミの排出物を発見したり、ブラッシングした際にサナギや卵がポロポロと落ちるのを見つけることができます。ノミのアレルギーがある犬では、たった1匹のノミが吸血しただけでも、全身の発赤や強いかゆみがあります。そのため、ノミに対する予防がとても大切です。もし、ノミを見つけても決してノミを潰してはいけません。ノミの卵を体にばら撒くことになるので絶対にやめましょう。

目や唇の皮膚がむくむ・・若い犬で、急に顔がかゆくなり、絨毯やカーペットにこすりつけたり、顔をブルブルと振ったりすることがあります。さらに症状が進むと、量まぶたと上唇が腫れ、目が細くなります。これはじんましんと同じで、かまぼこやソーセージなどが原因で起こることがありますので、かまぼこの板などを犬のおもちゃとして与えるのは控えましょう。

⑥毛

特にかゆみはなくても、ツヤツヤして光っていた毛ヅヤがなくなり、逆立ってきて、抜け毛が目立つようになるのも皮膚病のサインです。日頃のブラッシングで、フケや抜け毛が多くなれば飼い主さんも気づくと思いますが、かゆみがあまり無いため、それ以外の症状を気にかけてあげましょう。

頭や口の周りの脱毛、膿疱ができる・・毛包虫(もうほうちゅう)というダニの感染によって起こる毛包虫症という皮膚病があります。頭や口の周りに紅斑を伴った脱毛部ができるのが特徴です。ほうっておくとその部位の毛が次第に抜けて、全身に広がっていきます。この病気はかゆみを伴わないため、発見が遅れがちになります。ただし、症状が悪化して毛穴が化膿するとかゆみが生じます。日頃から皮膚を清潔にして、質の良い食事を与え、また、シャンプーやブラっシングをする際に毛や皮膚をチェックすることが大切です。

多飲多尿、左右対称の脱毛、お腹が張る・・ホルモンのバランスが崩れることで起こる皮膚病があります。甲状腺機能亢進症という病気では、皮膚の病変のほかにも、元気がなくなり、寝ている時間が多く、少し動くと疲れてしまう特徴があります。また、クッシング病(副腎皮質機能亢進症)になると、まず毛が徐々に薄くなり、そして左右対称に抜けていきます。特に背中に多くみられます。皮膚は色素が沈着して全体的に黒ずんだようになります。また、ガツガツよく食べ、水もたくさん飲みおしっこも多くなります。クッシング病は慢性的な病気で、特に高齢の犬に多く、犬種ではプードル、ダックスフンド、ポメラニアンなどによくみられます。免疫異常の皮膚炎は、目の周りや鼻の周り、耳に脱毛を起こしかさぶたが見られることが多いので、日頃からよく観察しましょう。

かゆみはないがフケが多い・・かゆみがなくてフケが多い時は、皮膚が乾燥しすぎていることが考えられます。その際は保湿性のシャンプーとリンスを使い、ドライヤーはあまり使わずにタオルで乾かしてあげましょう。たまに「人間用のシャンプーを使用してもいいですか?」と聞かれる飼い主さんがおられますが、人間の皮膚は酸性、犬の皮膚はアルカリ性ですので、それぞれの性質に合ったシャンプーを使用し、決して人間用のシャンプーは刺激が強いので使用しないでください。

また、皮膚や毛並みのことを心配しすぎて、週に数回もシャンプーをされている飼い主さんがおられますが、シャンプーのしすぎは逆に毛や皮膚が乾燥してフケや抜け毛が多くなります。病気などで獣医さんの指示がない限り、シャンプーは月に1回、多くても3週間に1回くらいのペースが理想です。

シニア犬の病気の9割は『隠れ水分不足』が原因

たくさん運動して、喉が乾いて水分を欲して水から水を飲むのが理想ですが、水をあまり飲まない犬は多く、犬自身も「水分が足りていない」という自覚はもちろんありません。そして飼い主さんからも「普段からあまり水を飲みません」と言った話をよく聞きます。

覚えておきたい脱水サイン

①犬の後ろ側から首のあたりの皮膚をつまみ、つまんだ皮膚がすぐに戻らないようであれば脱水の可能性があります。

②目が乾いているかチェックします。目に潤いがあると室内の蛍光灯がそのまま目に映るくらいきれいに反射します。逆に目に潤いがないと、蛍光灯がゆがんで映ります。

③口内が乾いていないかチェックします。口内が乾いていると唾液がねばねばし、歯茎を触ると指がピタピタと張り付くような感じです。

脱水サインをご紹介しましたが、いちばん大事なのは脱水前のサインを見逃さず、脱水を予防する事です。

脱水前の初期症状としてチェックできるのがおしっこの色です。おしっこが薄い黄色であれば問題ありませんが、脱水になると麦色のように濃くなります。ただし犬によってはおしっこを溜め込んで出す子もいるため、その際はおしっこの量も多く、色が濃く見えるので判断が難しくなります。また、尿の匂いが強い場合は膀胱炎になっている場合もあるのでおしっこはまめにさせた方がよいでしょう。

水分不足で怖いのは、腎臓病につながる可能性があることです。腎臓が悪いと体内に老廃物が溜まりやすく、それが原因で皮膚病や心臓病につながることもあります。そうなれば当然、寿命にもかかわってきますので、水分不足には十分に注意しましょう。

犬の1日に必要な水分量は下記の関連記事を参考にしてください。

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犬が喜んで水を飲む方法

犬の健康寿命を延ばすためには水分摂取は必要不可欠です。とはいえ、なかなか水を飲んでくれない犬も多くいます。

暑い日や激しい運動をしていなくても、室内で長時間エアコンの風に当たっているだけで水分は抜けていくので、特にシニア犬は意識して水を飲ませなくてはいけません。

人と同じで喉が乾いてから飲ませるのでは遅く、脱水になる前に飲ませることが重要です。

あまり水を飲まない犬には水だけではなく、鶏肉や魚を煮た煮汁を飲ませる方法があります。普段から手作り食を食べている犬は食事の中で水分摂取ができますが、ドッグフードをメインに食べている犬にはお白湯でふやかしたり、煮汁をスープのようにかけてあげたり、お水の中に風味付で少しだけ煮汁を入れてあげると喜んで飲むこともあります。毎回煮汁を作るのが大変な場合は、作った煮汁を製氷皿に入れて冷凍しておき、その都度1個を水の中に入れて飲ませも良いです。

ちなみに我が家の虎鉄ちゃんは、毎朝起きてすぐにお白湯や温めた犬用のやぎミルクを飲ませています。冬の寒い時期はもちろん夏のクーラーによる冷え対策にもなるので、健康寿命を延ばすためには1年中、犬にも温活は大事です。

また、ミネラル不足を補うためにミネラルウォーターを与える飼い主さんもおられますが、硬水のミネラルウォーターにはカルシウムやマグネシウムがたくさん含まれているため結石ができやすいとも言われていますので注意して、できるだけ軟水で新鮮な常温の水、またはお白湯を飲ませてあげましょう。

愛情ホルモンで犬の免疫力を整えましょう

犬のしつけでは、飼い主と犬との間には主従関係をはっきりさせることがよいとされています。例えば、「犬と一緒に寝てはいけない」「家族と一緒に食事をしてはいけない」「人間より先にご飯を与えてはいけない」「散歩中は犬を前に歩かせてはいけない」などと言われていますが、私はそうは思いません。

「寝食をともにする」という言葉があるように、飼い主さんにとって愛犬は『大切な家族』です。

だからこそ寝食をともにする関係性がとても大事だと思います。

今はドッグカフェで犬も一緒に家族とご飯を食べたり、おうちの中でも、犬から先に食事を与え、満足してウトウトしている間に家族が食事を済ませることもありますし、いつもそばにいたい犬は飼い主さんと一緒に寝たいのです。

賛否両論ありますが、飼い主さんと愛犬が絆を深めることで、人にも犬にも得られる効果は高いでしょう。

飼い主さんと犬が見つめ合うとオキシトシンという愛情ホルモンが分泌され、より相手が愛おしくなり、深い絆が形成されます。オキシトシンが上昇すると、今度は犬の方から飼い主さんと目を合わせようと見つめてきてくれます。

オキシトシンが分泌されると、お互いの免疫力が上がり、感染症予防につながり、記憶力がアップされ、心臓の機能を上げるなどの効果もあると報告されており、健康寿命にもつながります。

また、ペットを飼っているお年寄りには認知症が少ないそうで、子供は犬と一緒にいることで知育の発達につながると言われていますが、これも人と犬との見えない絆によるものなのではないでしょうか。

アイコンタクトによってオキシトシンが分泌され健康につながるという報告がある以上、飼い主さんと愛犬が家族として愛情を深めることで健康寿命につながると私は思います。

犬は言葉を発することはできませんが、飼い主さんがつらい時、悲しい時、苦しい時などいろんな感情を、ただただ黙って寄り添ってくれている感じがします。

犬のすごいところは、なんでも受け入れてくれることです。飼い主さんのどんな状況でも受け入れて、それを無償の愛に変えてしまうのです。

人も犬も健康寿命を延ばすには、食事や生活習慣の見直しはもちろんですが、ストレスのないリラックスした環境がとても大事です。逆にいえば、ストレスの高い環境は犬の寿命にも関わってきます

犬がリラックスするには、飼い主さんがいつもニコニコ笑って元気に過ごすことが、犬にとってもとても大切なことです。

「一緒にいて楽しい」が犬の心の免疫力のバランスを整え、飼い主さんとの絆が深まるほど犬の長生きにつながり、あまり構ってあげず、ほったらかしに放置しておくことはなんらかのトラブルが起こり、健康寿命を縮めてしまいます。

飼い主さんとのコミュニケーションがしっかりとれていれば、ストレスで体を舐めて皮膚トラブルになったり、室内でのイタズラも減ってくるでしょう。

是非、たくさん遊んで、たくさん見つめ合って、たくさん楽しい時間を一緒に過ごして、犬の心を満たしてあげましょう。

犬に必要な睡眠時間と安眠場所とは

犬に必要な睡眠時間

犬も人と同じで、年齢や生活環境によって睡眠時間が変わってきます。

成犬の1日の平均睡眠時間は12時間〜15時間といわれてます。

子犬は成犬と比べると長く、18時間以上は必要だと考えられており、睡眠時間が短いと身心の成長に影響を及ぼすなど病気の原因になることもあります。人も犬も寝る子は育つとはこのことですね。子犬の時期は特に可愛いですが、構い過ぎは睡眠不足になりますので、ゆっくり眠れる環境で無理に起こさず、そっとしておいてあげてください。

シニア犬になると体力も落ち、疲れやすくなるため、眠って過ごす時間が長くなります。健康状態によっては食事と排泄以外は寝て過ごす犬もいるでしょう。睡眠は大切ですが、高齢だからといって家の中だけで過ごしていると、運動機能が低下し、さらに体力も落ち、老化のスピードを早めてしまいますので、動けるようであればゆっくりでいいので、家の周りを歩いたり、歩行困難な場合はカートに乗せて外の風や匂いを嗅いだりすることが良い刺激になります。

犬は浅い睡眠をたくさんするので「すぐに起きてしまう」と心配しなくても、トータルで睡眠時間が取れていれば大丈夫です。

また、犬の問題行動の多くは睡眠不足が原因と言われていますので、犬がしっかりと安眠できる環境を整えてあげることが大切です。

犬の安眠場所に必要なのは家族の気配

私のサロンでもほとんどの飼い主さんから「犬と同じ布団で寝てるのですが、いいですか?」とよく聞かれますが、私は犬にとって安心できる場所が安眠できる場所だと思いますので「飼い主さんと一緒に寝てもいいですよ」と伝えます。

犬がケージの中で落ち着いて寝れるなら、同じ布団で飼い主さんに踏まれることによる事故防止、人と犬が別に寝ることで感染症予防、災害時の搬出など、やはりケージで寝るのが1番安全でおすすめですので、室温管理ができて、薄暗く静かで、家族の気配が感じられる場所にケージを設置して寝かせてあげましょう。

ただ、ケージの中でご飯も食べて、排泄もして1日のほとんどをケージの中で過ごさせるのはおすすめしません。特にリビングでは家族団欒で過ごしているのに、自分だけケージに閉じ込められて行きたいけど行けない状況は犬にとても強いストレスを与え問題行動に発展する可能性もあります。先ほども述べたように、犬と寝食をともにして家族の絆を深めることでオキシトシンが分泌され、健康寿命を延ばすことにつながります。

また、ケージの中にトイレがある『一体型』のサークルも販売されていますが、臭覚が鋭い犬にとって、トイレの近くで寝たり食べたりするのは相当なストレスだと思います。犬は習性上、とてもきれい好きなので、寝る場所と食べる場所とトイレはできるだけ離してあげましょう。

犬が自分からケージに入っていって寝るのか、飼い主さんの後をついていって寝るのか、落ち着ける場所、安眠できる場所は犬に選ばせてあげればいいと思っています。

ただし、人間の赤ちゃんと同じで子犬の頃に一緒に寝るのは危険です。ある程度の距離とガードがないとつぶしてしまう可能性があるからです。一緒に寝るのは、犬が自分で食事や排泄ができるようになってからがよいでしょう。

一緒に寝る、寝ないよりも大切なのは『家族の気配』です。たとえ別々の場所で寝ていても「ここに飼い主さんがいる」という気配がわかれば犬は不安にならず安心して眠れます。

またうるさい環境だと眠れないのは人も犬も同じです。特に犬は音に敏感なので、寝るときはできるだけ静かな環境にしてあげましょう。

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